人生100年時代の健かな資産運用術

ヘッジファンドが大損失を抱えた金融危機とは?

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ヘッジファンドは絶対収益を目指し、いかなることがあろうとも収益を伸ばすことだけを考えている。 しかし、やはり投資は水物である。 どれほど綿密な計画を立てていたとしても、不測の事態によってそれまでの投資実績が水泡に帰すことがしばしばあります。 今回は、ヘッジファンドが大きな損失を被ることとなった事例をいくつかご紹介いたします。

「イングランド銀行を潰した男」が犯した最大の誤算とは?

ジョージソロス ヘッジファンド

世界を支配する「スーパーハブ」として名高い、ジョージ・ソロス氏。 彼は、JPモルガン・チェースの会長兼CEOであるジェイミー・ダイモン氏や、世界最大の資産運用会社であるブラックロックの会長兼CEO、ローレンス・フィンクらとともに、ワールドワイドに人脈を広げる金融界の超エリートである。 彼の名前を世に知らしめたのは、俗にいうポンド危機で見せた鋭い洞察力に他ならない。 彼はこの一件で、「イングランド銀行を潰した男」として全世界に名前をとどろかせることになったのである。

「ポンド危機」とは?

当時、欧州では実質的に金利を固定する政策(ERM)を敢行していた。つまり、政治の影響力を為替にまで持ち込んでいたのである。 本来、ポンドの価値に追随して変動するはずであった金利が固定されたことにより、実際のポンドの価値は実勢から大幅に乖離してしまっていた。

そこにいち早く目を付けたのが、ジョージ・ソロス氏だった。 彼は、ポンドに大量の売りを入れ、安くなったところで買い戻したのだ。彼の資金力には当時からすさまじいものがあり、ポンドは大暴落を引き起こした。 イギリス政府はこの売り浴びせに対し、公定歩合を上げるなどの措置を講じるも、ポンドの価値が下がったことによる他の投資家たちの売り浴びせ終わることがなかった。

1992年、とうとうイギリスはERMからの脱退を余儀なくされ、ポンドは変動相場制に移行。 最終的に、彼の率いるヘッジファンドは10億ドル以上もの利益を得たという。 この一件から、彼には「イングランド銀行を潰した男」という異名が付くこととなった。

反トランプ思想が招いた大損失とは?

ドナルドトランプ ヒラリー

2016年、ドナルド・トランプ氏とヒラリー・クリントン氏の大統領戦は過熱を極めていた。 熱心なEU支持者であり、ヒラリー・クリントン派だったジョージ・ソロス氏は、トランプ氏を痛烈に批判。

「世界にとって危険人物」であるとまで言い切った。 彼は投資を度外視し、政治的な思想を持って当時の大統領選に挑んでいたのである。 「クリントン氏が大統領になり、株価は下がる」という持論を展開していた彼であったが、蓋を開けてみればトランプ氏の辛勝。

かつ、トランプ氏は税制関係の政策を打ち出していたこともあり経済の活発化を見越した投資家たちによって株価は上昇したのであった。 何もかもが思惑通りにならなかった彼は、なんとその時に1140億円もの損失を被ったといわれている。

しかし、あくまで彼はアメリカのために真摯に大統領選に挑んでいたらしく、損失に関して思うところはないようである。 ただひとつ、「米国は独裁者と化す可能性を秘めたペテン師を大統領に選んだ」という批判を除いて、ではあるが。

経済大国中国が引き起こした大恐慌とは?

2015年に世界同時株安が巻き起こり、金融市場をパニックに陥れた。 その発端となったのが、中国株の大暴落であるチャイナショックだ。 その背景には、中国経済が減速するのではないかという懸念があった。

GDP成長率の減速予想が火種となった

2011年にはGDPで世界2位となり、経済大国として確固たる地位を築き始めていた中国。 国力の高まりとともに中国株への人気もぐんぐんの上昇し、中国の個人投資家も株式投資を積極に行っていた。当時、中国市場の8割を個人投資家が独占していたという。

しかし、2015年に「2015年の中国GDP成長率は6%ほどにおさまる」という衝撃的な予測がなされたことをきっかけに、個人投資家たちは大きくうろたえた。 これまで平均で8%もの成長を見せていた中国のGDPが減速。

さらに、バブル状態であった中国株式市場の株式指数は2014年から1年足らずで200%もの上昇を記録していたが、中国当局が規制強化に動き出し、バブル崩壊を防ごうと施策を始めたというのだ。 その結果、中国の個人投資家たちが次々に中国株を売り始めることになった。

この売り浴びせによって、中国株は1か月の間に30%も下落。これが引き金となり、世界的にも株安が引き起こされ、世界同時株安となってしまったのだ。 これによって、2015年のヘッジファンド業績は2008年のリーマンショック以来最悪の数字を記録。 ヘッジファンド業界全体にも大きな打撃を与えることとなった。

多くのヘッジファンドが巨額の損失を被ったスイスフランショックとは?

2015年、スイスの中央銀行が自国通貨であるフランの対ユーロ上限を廃止すると発表したことにより、フランの価値が急騰したスイスフランショックが発生した。

当時、スイスの通貨フランは、ヨーロッパの通貨ユーロに対して1ユーロ=1.2スイスフランという上限が決まっていた。 1ユーロ=1.2フランで価格が推移し、それ以上の価格上昇はないと考えると、当然「売り」のポジションを持つことが正しい……はずだった。

個人投資家に限らず、多くのヘッジファンドも同様のポジションを持っていたが、上限を撤廃発表と同時にスイスフランの価格は急騰。

空売りを仕掛けていた多くのヘッジファンドが巨額の損失を被るという未曾有の事態が引き起こされてしまったのだった。 その損失はすさまじく、エベレストキャピタルというヘッジファンドに至っては、運用総額約3分の1の損失を計上したとまで言われているほどだ。

 

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